ギャラリーがらん日記・64
西荻の街もすっかり春の匂いに満ちて、
ちらほら紋白蝶やアゲハも見かけるようになりました。
そんなある朝、湯河原の懇意にしている旅館「藤田屋」さんから
どっさり掘りたてのタケノコが届きました。
というわけで早速糠と鷹の爪で灰汁抜き。そのなんともよい香り・・。
タケノコごはんはやり方もいろいろあると思うのですが、まずは
茶飯に入れて炊くのが香りも春らしくていいかなぁと。茶飯、筍ときて
すぐさま連想したのが「田毎」のたけのこ。あー食べたい・・。
おでん屋「田毎」さんはもうすごく長いお付き合い。
西荻南中央通り商店街を駅から五日市街道の方へ歩いていった
右側に大きな提灯が出ています。
以前は一筋荻窪寄りの、神明通り近くにありました。
銀座お多幸暖簾分け、法被姿の頑固親父がそこにいて、
その様があまりにも絵になっているんで
写真を撮らせてもらいました。
田毎はなんと言いますか、本当におでん屋さんらしいおでん屋さん。
今は亡くなられたご主人の後を
奥様が引き継がれ暖簾を守っておられます。
がらんオーナーはご主人の頃からのお付き合い。
独断的ですが、春おでんは、筍、とうふ、はんぺん、つぶ・・。
でも田毎さんに行ったら、なにはともあれ、とうふ、大根、たまご。
「おでんはさ、他人(ヒト)からダシをもらう方がうまいんだ」
いいこと言うなぁこのおっさん。そう思ったんです。
もう十年以上前のこと・・・。
人生の大先輩、先代早瀬さんの言葉が今も忘れられません。
先日は春の強い風の中、行ってきました新宿は
コニカミノルタプラザ、
「第33回木村伊兵衛写真賞展」
岡田敦さん「I am」 と志賀理江子さん「Lilly」 「CANARY」
大きな写真の連貼りは圧倒的に迫力があります。
向かい合わないわけにいかない。
そこには、写真特有の「ひょっとしたら見せてはいけないもの」を
鮮やかに見せつける覚悟のようなものが渦巻いています。
評論には、心の闇を全く別のアプローチで描いたふたつの受賞、
とありました。
岡田さんは白ホリに立たせた若い女性の正面アップショット、
リストカットの傷跡が残るかぼそい腕、細いはだか。
志賀さんはロンドン公営団地の人々を撮り、
更にそのプリントに独自の技巧を加えさら撮る内省的演出。
ちょっと霊的なものや超常現象を連想させます。
生と死のまなざし。
そこが2者の共通するテーマ性なのかもしれません。
ただ、ここに展示された写真がすごいな、と思ったのは
こちら側はこの大きな写真と向かい合おうとしているのに、
写し出された向こう側の彼女は、
ひょっとしたら、こちらを見ているようで
実は何も見ていないのじゃないか、という気にさせられたことです。
何も見ていない目。だから、闇?そのあたりは憶測にすぎませんが
赤裸々に向かい合うことができたのは写真家の力です。
ともあれ、これほどまでに「向かい合うこと」の意味=シャシン、
について考える機会を与えてくれた貴重な展示。
28日までやってます。
ところで、がらん、スケジュール・ページ、リニューアルしました。
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